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抱いた夢がひとつなら・・・ [学生の頃のこと]

教師をしていた年の冬、近くのSという町で同じく高校の教師をしていた
岡本のところに遊びに行った。岡本は大学の同じ研究室の同級生。
たぶん冬休み中だったと思うが、ぼたっとした雪がとぎれることなく降り続く日だった。
安いウイスキーを片手に小さなストーブにあたりながら、
「おれ、学校辞めるんだ・・・」というようなことを話した。
東京に出て、下積みから始めてカメラマンになろうと決心していた。
岡本は多くを話すこともなく、そうか、と聞いてくれていた。
彼はジャズが好きで、ジャズ以外にもたくさんのレコードを持っていて、
その中から選んで何枚も回転させてはレコード針をのせてくれた。
僕はそのうちの一枚をダビングしてほしいと頼んだ。

♪♪  流れ流れて青春は
   夢を支えに生きるもの
   抱いた夢がひとつなら
   転んでなくした夢ひとつ
   ああ、青春流れ者  ♪♪

海援隊の「廻り舞台篇」というアルバムの中のタイトルの知らない曲の一節。
抱いた夢がひとつなら
転んでなくした夢ひとつ、か。
当時乗っていた車を転がして北海道のKという町から田舎の山形まで向かった。
雪道を走りながら、岡本がくれたテープをオートリバースでかけっぱなしだった。
僕はずっと泣いていた。
もう戻れないんだな、もう帰れないんだな。そう思うと寂しく孤独でただ涙があふれてきた。
これからのことを考えると、ただただ不安に襲われて、そして涙があふれた。
22歳だった。

そのテープが出てきた。ひょっとしたらもう聞くことはないかもしれないが、
大切にしまっておこうと思う。

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