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ソブラエティ または 酔生夢死 [いろいろ思うこと]

ソブラエティ(sobriety)とは、酒に酔っていないこと、酔わないで生きるという意味。そのほかに平穏とか豊かさという意味があるようだが、酔わないで心の平穏さを保つとか、酔っ払っていることのむなしさに対する豊かさとか、そういうふうに考えれば、反対方向から見ているだけで、ほぼ同義ともいえる。

中学生だった時、Y校長先生が校長講話の折によく話をしていたのが、「酔生夢死」ということだった。goo辞書というのには
「何もせずに、むなしく一生を過ごすこと。生きている意味を自覚することなく、ぼんやりと無自覚に一生を送ること。酒に酔ったような、また、夢を見ているような心地で死んでいく意から。」
とあった。

酔った状態、とはどういうことだろうか。酔った状態で生きるとはどういうことだろうか。
アルコールに酔う、女性に盲目になる、ばくちにのめり込む、受験勉強に明け暮れる、事業の拡張に夢中になる、ボランティア活動に熱中する・・・、そうしたことは酔っているということだろうか、酔っていないだろうか。
山田洋次監督は映画作りに酔っているだろうか、酔っていないだろうか。
あるいは、覚醒しているとはどういうことか。あるいは、平穏とか豊かさとかどういうことだろうか。
たまたまユーチューブで「禅」という映画を見た。修行に修行を積み重ねる中に「悟り」を得てゆこうとする僧が描かれているのだが、僕の中のどこかで
「それって酔ってんじゃない?」
と思ってしまった。

酔生夢死という言葉は、原典は程子語録という書物によるのだそうで、
「雖高才明智、膠於見聞、酔生夢死、不自覚也」
とあるのだそうだ。平易な言葉に訳してみると(間違っているかもしれないけど)、
「いくら頭いいったって、自分が見たり聞いたりしたものだけにこだわってたら、酔っぱらったまま生きていても、夢見るように死んでいっても、わかんないんじゃないの。」
こんな訳はどうであろうか。
酔うというのは、周りが見えないほどに何かにこだわることに通じるかもしれない。たとえば「悟る」ということにこだわりすぎると、日々の生きるということから、あるいは「悟る」ということの本質からそれて行ってしまいそうな気がするが、そう感じるのは変だろうか。

ちょっと話がかわるが、以前Nという人の『気の奥義』という本を読んだことがある。その時は、気を学んでいたので、気の奥義とはいったい何だろうと真剣に読んだのだった。気の奥義について、一冊のそのなかにわずかこう書いてあった。
「気の奥義は、過去を捨てて今を生きること」
これは「謬於見聞、・・・」に通じるのかとも思う。
過去やこだわりを捨てて生きたとき、平穏とか豊かさとか、そうしたものに近づくのだろうか。(ちなみに、N氏はがちがちに過去にしがみついているように見えたので、いかがなものかと思った。)

アメリカに暮らす非常に優秀な友だちがいるが、彼女にソブラエティについてメールで聞いたことがあった。その返信の一部を
・・・・・・・・・・
ソブラエティという表現で普段耳にする事はほとんどありませんが(少し専門的な使われ方かもしれません)、その語源となっているsober (しらふ)という形容詞はよく使います。パーティの後で、車を運転して帰る人に「Are you sober? (しらふだよね)」とかそんな使い方です。
おっしゃるように、Soberには、ただ「酔ってない」という事以上に、「平常心」、「本来の自分」というようなニュアンスがあるとは感じます。

あくまでもアメリカの話ですが、ピューリタンが建国した国のせいか、お酒に酔って正体を無くすのはとても軽蔑すべき事、と彼らは捉えるようです。酔うことは、自分ではなくなること、無責任になること、そんな考え方がベースにあるように思えます。
・・・・・・・・・・

人は、生まれたときにはそのままの自分なのに、いつからか、自分自身に違和感を持ったりすることもある。そのあげく「自分らしく生きよう」などという努力に、人生の多くをさいたりして。僕が僕であることは大切なことなのだろうとは思う。でも、ある意味どうでもいいかもしれない。
僕には、日々の生活を丁寧に生きることの中に、ソブラエティということを理解するヒントがあるように思えるが、そんなこともどうでもいいのかもしれない。酔生夢死というような生き方をしないようにと中学生の時に教わったが、その善し悪しなどどうでもいいのかもしれない。
三が日から酔いが覚めそうな話になってしまった。




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