SSブログ

トルコのチャイ屋では僕は超能力者だった [旅のこと]



トルコでは、「地球の歩き方」には決して載ることはないだろう小さな町でもよくバスを降りた。
町のたたずまいや、どんなふうに人は生きているのだろうかと思い、いつもいくらかの期待を持ちながら降車したものだった。
明るいうちであれば、何はともあれチャイ屋を探して休む。
田舎の町に限らず、トルコではそこここにチャイ屋がある。トルコのチャイ(紅茶)は、ほとんどの場合小さなグラスのカップに砂糖の多い紅茶がでる。熱い紅茶を受け皿に注いで少し冷まして飲んだりもしていた。
チャイ屋にはたいがい正方形のテーブルがあり、それを囲んで人生の先輩たちがカードゲームをしている。全国的によくやっていたのはセブンブリッジのようなゲームだった。
僕はその隣の正方形にひとりで座り、チャイを飲みながら男たちをなんとなく見る。
ゲームが終わったタイミングで、エクスキューズを入れてちょっとだけカードを貸してもらう。
貸してもらったトランプをシャッフルして一人にカードを「一枚」引いてもらう。
我が輩がそれを当てる。トルコ語でたとえば「ダイヤの8!!」のようにもっともらしく言うと、それを見ていた男たちは「オッー!!」と驚き、歓声を上げる。
もう1回やってくれなどと言われるが、超能力だから1回やるだけでもものすごいパワーを使うからもうできないと言って丁重に断る。決してばれるといけないから、ではない。
男たちはゲームに戻り、僕は僕の正方形にもどりチャイの残りを飲む。

勘定してもらおうとレジにゆくと、店のおやじは手を後ろに組んで首を横に振る。
お代はいらないというのだ。
あそこの人たちが払ってくれた、と嬉しそうにさっきのテーブルを指さす。
男たちのテーブルに行ってお礼を言うと、男たちは口々に「凄かったぞ」「明日も来いよ」などといいながらこれまた嬉しそうにしている。
僕は曖昧な返事と曖昧な笑顔を浮かべて店を出る。明日はもういないと思いながら。





nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。