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夕焼けの思い出 [田舎のこと・母のこと]

幼稚園児の頃だったろうか
どこへ行った帰りか
家に帰ると
玄関が閉まっていて
誰もいなくって
ぼくは当たり前のように
お母さんが待っていると思っていたのに
いないから
寂しくって寂しくって
おかあさん、おかあさん、
と家の前で何度も泣き叫んで
それでもおかあさんはいなくって
夕方の
絵に描いたような赤い夕焼けで
寂しくって寂しくって
ただ立ちすくんで泣いて
おかあさん
おかあさん、って泣いて
どのくらいたったのか
おかあさんが帰ってきて
どういって慰めてくれたのか
覚えていないけれど
お母さんがいて
それでよかった。


過日、一周忌の法要をしに山形に行った。秋らしい張りのある空気が陽に暖められた穏やかな日だった。
東正寺の本堂はがらんと開け放たれ、その奥の間に代々のご住職の大きな写真が7,8枚ほど並んで飾ってあるのが見えた。天井には龍の絵やら天女らしい女性やらが描かれていた。あちこちに書も飾ってあったがどれも読めなかった。小さい頃から来ていたお寺ではあったが、こうしてゆっくりと眺めるのは初めてのような気がする。ときおり母の戒名の一部らしい音が聞こえるが、ご住職の歯切れのいいお経の声と木魚の音がただ心地よく聞こえた。
こうして僕が引きずっているのは、忘れないためではなくて、何かをちゃんと完了してゆくためだと思う、たぶん。


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