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今年の桜は [いろいろ思うこと]

桜の季節になると思い出す話がある。
東京で仕事をしていたころですが、ある大手の保険会社の方の取材に行きました。その保険会社の入社案内のパンフレットの仕事だったので、もちろん仕事の話を聞いたのですが、どうした話の流れか、その人の個人的な話になりました。
彼は数年前に大病をして、医師からあと何ヶ月と、宣告されたのでした。その間どのような思いで過ごしたのかは聞きませんでしたが、数ヶ月が過ぎて春を迎えました。
彼が花見に出かけて桜を見たときのことを
「その年に見た桜は、本当にきれいだった」
と言いました。そう言った彼の目は遠くを見つめて、そして、うるんでいました。少し哀しげでさえあったように思えました。僕が、ファインダーを通して見ていたので大きく間違いはないでしょう。彼は何かをこらえるようにして「本当にきれいだった」といったのです。これが最後の桜か・・・、という思いで見た桜でした。
僕は、
ああ、こんな思いで一瞬一瞬を生きられたらいいな、
ああ、人生がこんな瞬間の積み重ねだったら素敵だろうな、と思いました。

こんな話を思い出したのは、昨日の朝ラジオの「文学のしずく」というコーナーで、坂口安吾の「桜の森の満開の下」という短編の朗読を聞いたからかもしれません。
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