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井上ひさしさん [カメラマンになる周辺など]

今日、井上ひさしさんが亡くなった。
フリーとして独立したころ日販の『Do Book』という販促のための冊子の仕事で毎月作家さんを撮らせてもらっていた。その何回目かの頃に井上ひさしさんを撮らせてもらった。
彼は山形は置賜の川西町の小松の出身で、僕はその隣の市の赤湯というところの出だ。彼の小説の中で、この場面はきっとここだろう、と思えるところが一カ所だけある。そこは僕が生まれてまだごく幼い頃までいたところなので、そのか所を読むとなんだかちょっとだけつーんとする。
川西出身の高校の同級生のKと去年の秋に飲んだときに、たまたま井上ひさしの話になってKは「あの小説に出てくる酒蔵はきっと・・・で、そこに出てくる・・・は・・・」というふうにかなり具体的にわかるようだった。
思えば、となり町といってもつい昨年までいったことがなかった。行く用事がなかった。去年の秋から冬にかけていろんなことがあった。

撮影のあとに「僕、赤湯の出身なんです」と話しかけた。
「そうですか、赤湯ですか。頑張ってくださいね」と言ってくださった。静かな口調だった。
意味のない会話だったけれど、言葉を交わしてもらったことに僕には意味があった。
僕が28歳の頃のことだった。
ばかばかしいように見える小説もあるけど、彼の小説では、たとえば人への慈しみとか平和への祈りといったようなものが、オーケストラのコントラバスのように奏でられているように思う。

中学生の頃から、黄色い背表紙の新潮文庫でいっぱい読ませてもらった。
(合掌)


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